「鉄塔のある風景」



夏の夜の草いきれ

どうしてか桜餅みたいだ、

と言ったら笑われた





月と星がひとつだけ

山を縁取るまだ少しのオレンジ

今日はまだ終わらない





たった五文字のひとことが

言い出せずに黙って歩いた





泣きたくなるほどの優しい風が

そっと寄り添うから

繋いだ手を強く握った





言葉でなくても思いは伝わる

そんなことさえ今はもうどうでもいい

辺りは紺色 夏の夜