「消化剤のススメ」


 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュル、僕は一体何を。考えて。そうだ、僕は何かを求めて、手に入れたくて、何かって何だ?時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。 チュルチュル、それで僕は一体何を。ああそうだ、僕は何かを、何かって何だ?頭を振る。眩む。頭の中で光が。光が弾ける。その中に、ぼやけた影、人間?記憶を遡る。異性、年齢は同じ、長い髪、ぼやけた表情、彼女の名前は?頭を振る、眩む。真暗な世界に光が、弾ける、同じ影、彼女の名前は?何かを言っている、チュルチュル、聞き取れない、一体何を、チュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュル、僕は一体何を。考えて。そうだ、僕は何かを求めて、手に入れたくて、何かって何だ?時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。 チュルチュル、それで僕は一体何を。ああそうだ、僕は何かを、何かって何だ?頭を振る。眩む。頭の中で光が。光が弾ける。その中に、ぼやけた影、人間?記憶を遡る。異性、年齢は同じ、長い髪、ぼやけた表情、彼女の名前は?頭を振る、眩む。真暗な世界に光が、弾ける、同じ影、彼女の名前は?何かを言っている、チュルチュル、聞き取れない、一体何を、チュルチュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュル、僕は一体何を。考えて。そうだ、僕は何かを求めて、何かって何だ?時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。 チュルチュル、それで僕は一体何を。ああそうだ、僕は何かを、何かって何だ?頭を振る。眩む。頭の中で光が。光が弾ける。その中に、ぼやけた影、人間?記憶を遡る。異性、年齢は同じ、長い髪、ぼやけた表情、彼女の名前は?頭を振る、眩む。真暗な世界に光が、弾ける、同じ影、彼女の名前は?何かを言っている、チュルチュル、聞き取れない、一体何を、チュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュル、僕は一体何を。考えて。僕は何かを、何かって何だ?頭を振る。眩む。頭の中で光が。光が弾ける。その中に、ぼやけた影、彼女の名前は?何かを言っている、チュルチュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュル、僕は一体何を。そうだ、僕は何かを求めて、手に入れたくて、何かって何だ?時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。チュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュル、それで僕は一体何を。僕は何かを、何かって何だ?頭を振る。眩む。頭の中で光が。光が弾ける。その中に、ぼやけた影、人間?記憶を遡る。異性、年齢は同じ、長い髪、ぼやけた表情、彼女の名前は?頭を振る、眩む。真暗な世界に光が、弾ける、チュルチュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュルチュルチュル、僕は一体何を。時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。チュルチュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュルチュル、頭を振る、眩む。真暗な世界に光が、弾ける、同じ影、彼女の名前は?何かを言っている、チュルチュル、聞き取れない、一体何を、チュルチュルチュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。チュルチュルチュル、それで僕は一体何を。頭を振る。眩む。頭の中で光が。真暗な世界に光が、その中に、ぼやけた影、異性、何かを言っている、長い髪、彼女の名前は? チュルチュル、僕は一体何を。何かって何だ?チュルチュル、頭を振る。眩む。頭の中で光が。ぼやけた影、人間?記憶を遡る。異性、年齢は同じ、長い髪、何かを言っている、何かって何だ?チュルチュルチュル、聞き取れない、ぼやけた表情、人間?長い髪、チュルチュルチュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。チュルチュル、時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。チュルチュルチュルチュル、すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を、錠剤を、錠剤を、錠剤が、もう、残り少ない、チュルチュルチュル、 胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。僕は一体何を。ああそうだ、僕は何かを、何かって何だ?チュルチュルチュル、光が弾ける。ぼやけた影、人間?頭を振る、チュルチュルチュル。何かって何だ?視界が滲む。ぼやけた影、ぼやけた表情、チュルチュル、人間?チュルチュルチュル、彼女の名前は?何かを言っている、何かって何だ?チュルチュル、聞き取れない、チュルチュルチュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を手のひらに乗せる。カタカナ四文字。全部で五粒。一気にあおる。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。思わず口を押さえてえづくふり。肩で息をする。胃はまだきりきりと痛む。動悸が止まない。視界が滲む。酸素不足のぼんやりとした頭。 チュルチュル、僕は一体何を。ああそうだ、僕は何かを、何かって何だ?チュルチュルチュル、時計を見る。午前四時。これは狂っている。二分早い。直さなければ。チュルチュル、すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を、錠剤を、錠剤が、もう残り少ない、チュルチュルチュルチュルチュルチュルチュル、頭を振る。眩む。頭の中で光が。ぼやけた影、何かを言っている、彼女の名前は?チュルチュル、 すごく胃が痛い。またいつものあれだ。薬箱を探す。小さな瓶を取り出して変な色の錠剤を、錠剤を、錠剤を、錠剤を、錠剤を錠剤を錠剤を錠剤を、もう錠剤が錠剤を錠剤が空っぽだ空っぽだこれがないと僕はチュルチュルチュルチュルすごく胃が痛い。またいつものあれだ。だけどもう錠剤がない空っぽだ動悸が止まない、錠剤がないと僕はチュルチュルチュルチュル小さな瓶は僕の手の中にあるのにチュルチュルチュルチュルチュル錠剤が錠剤が錠剤がもうこれがないと胃がチュルチュルチュルチュル胃が痛い。だけど瓶の中はチュルチュルまたいつものあれだ。 胃が痛い胃が痛い胃が痛い痛いのに痛いのに痛いのに痛いのにもう瓶の中は空っぽでチュルチュルチュルチュルチュルチュルチュル頭を振る。頭の中で光が。光が弾ける。その中に、ぼやけた影、人間?記憶をチュルチュル遡る。異チュルチュル性、年齢は同じ、チュルチュル長い髪、ぼやけた表情、彼女の名前は?頭を振る、眩む。真暗な世界に光が、弾ける、彼チュル女チュルの名チュルチュル前は?何かを言っている、チュルチュル、聞き取れない、チュルチュルチュル、聞き取れない、 チュルチュル、僕は一体何を、チュルチュル、時計を見る。チュル、午前四時。チュルチュル、これは狂っている。チュルチュル、二分早い。チュルチュル、直さなければ。頭を振る。頭の中で光が。光が弾ける。頭を振る、眩む。真暗な世界に光が、弾ける、頭を振る。頭の中で光が。光が弾ける。真暗な世界に光が、弾ける、ぼやけた影、彼女の名前は?異性、年齢は同じ、長い髪、ぼやけた表情、記憶を遡る。ぼやけた影、人間?記憶を遡る。頭の中で光が。光が弾ける。光が。光が。彼女の影が。形を。光が。光が。光で。形を。彼女の名前は?ぼやけた表情、彼女の名前は?
 床を見る。転がった瓶のそばに、一粒、最後の錠剤が。瓶のそばに。手のひらに乗せる。震える手でそっと口に運ぶ。水は飲まない。瞬間、苦み。薬の味。拡がる。口腔に、食道に、胃に、胃に、胃に。着地、溶ける。心が。記憶が。光が。記憶が。弾ける。弾ける。溶けてゆく。僕の中の全てが、僕を縁取る全てが、僕を染めた全てが、溶けて、溶けて、どうしようもなく一つになって、すとんと落ちてゆく。何処かに。何処かへ。
 カーテンの隙間から、細く差し込む光、眩いばかりに細く細く差し込むのは本当の光。瞳に柔らかく突き刺さる。柔らかな痛み。柔らかな安らぎ。柔らかな痛み。瞳を閉じる。光の残像がゆらゆら揺らめく。いっそ苦しい程に狂おしい程に狂おしい程に瞼に焼き付いた痛み。
 チュルチュルチュルチュルチュル。頭の何処かで音がした。チュルチュルチュルチュルチュル。チュルチュルチュルチュルチュル。ネジを巻く音。僕の中の。チュルチュルチュルチュルチュル。頭の中の。チュルチュルチュルチュルチュル。心の中の。チュルチュルチュルチュルチュル。全てが溶けた後の、僕の中で。チュルチュルチュルチュルチュルチュルチュルチュルチュルチュルチュルチュルチュルいつまでも止まない。
 僕が僕でいるために。チュルチュルと。
 頭を振る。目を閉じる。瞼の裏側、一つの影。閉じた世界で目を凝らす。一人の影。ぼやけた影。緩やかに形を保って。忘れていたかったのか?忘れてしまったのか?ぼやけた表情。最後の表情。思い出せるのはそこまで。全て溶けてしまった僕の中で、いつまでもそのままで彼女は。きっと僕に何かを言いたくて。聞き取れない。聞かなかった。聞きたかったはずの声はもう、どこにも落ちていない。
 だけど。
 僕は。
 全てが溶け合った僕は。
 溶かされた僕は。
 手を伸ばす。
 本当の光へ。
 手を伸ばした僕は。
 ぎこちなく顔を綻ばせ。
 解れた糸をたぐり寄せるように。
 そうやって僕は。
 僕は。
 僕は。








 ようやく、君の名前を呼べた。


 ―終―



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読みにくいのは仕様です。
西尾維新さんが戯れ言シリーズでやっていたことがやりたくて、
試してみたらこんな惨状に。
ちなみに錠剤は胃薬です。医薬品は、用法・用量を守って正しくお使い下さい。